株式会社ダーツライブの創業メンバーである竹之内 崇は「ダーツというアソビを広めたい」という想いから、多岐にわたる取り組みをしてきました。振り返ってみて一貫していたのは、ダーツライブが人と人が一緒に遊べる「場所」を作り続けてきたということ。そこには、創業当時から変わらないダーツライブらしさがありました。
私は創業以来、ダーツのプロツアートーナメントや店舗の立ち上げなど、さまざまな事業の立ち上げに携わってきましたが、2022年現在は企業アライアンスやキャンペーンタイアップ獲得の責任者をしています。
企業からIP(知的財産)のライセンスアウト、つまり使用の許諾を獲得するため企画・提案することから始まります。
獲得した後は、IPを効果的に使うために社内の開発部やデザイン、プロモーション部をディレクションしながら相手企業との調整をしていきます。部署内で仕事をしているというより、各部署を横断している特殊なポジションですね。
企画の例を挙げると、ダーツライブマシンでIPの人気キャラクターを使ったオリジナルゲームを開発したり、ゲームを盛り上げるデジタルコンテンツの制作、さらには限定デザインのグッズ販売など案件によって多岐にわたります。
直近では『TIGER & BUNNY 2』、TVアニメ『東京リベンジャーズ』、映画『ルパン三世 THE FIRST 』、飲料メーカータイアップ、劇場版『Fate/stay night[Heaven’s Feel]』など。
弊社はセガサミーグループの一員なので、グループのIP「ソニック」との30周年記念コラボキャンペーンも大々的に実施しました。
▲2021年に実施したセガの人気キャラクター「ソニック」とのコラボレーション
私がなぜ企業コラボやIP獲得に力を入れているのかというと、より多くの方にダーツを触れてもらうきっかけに「ツナガル」と捉えているからです。
以前よりダーツ自体の認知度が増してきたとはいえ、まだまだニッチな競技です。だから他企業やIPの力を借りて、より多くの人に関心ごととして捉えていただき、注目してもらいたいのです。
たとえば、友達に「ダーツ行こうよ」と誘われても、全く興味がないと「行く」という行動を起こすのは難しい。でも「あのアニメとコラボしているからやってみない?」という誘い方なら少し気になってもらえます。そこから「ダーツをやってみたらおもしろかった」と思っていただけたら最高ですね。
ダーツライブが社員に掲げている企業哲学に「ヒトはアソぶ。トモにアソぶ。」というフレーズがあります。これは私たちが世の中に何を提供してきたのだろう、何を目的に仕事をしてきたのだろうということを改めて言語化したもの。
ですからこのフレーズには、ダーツライブの創業当時から現在まで変わっていない姿が集約されていると思います。私たちは、絶えず時代と人に寄り添って「場所」を生み出してきました。
ダーツがもたらす楽しさを体感してほしくてお店を、ダーツ仲間がともに盛り上がれるイベントを、ダーツをスポーツとして発展させるために大会を……と、手掛けるサービスのそばにはいつも必ず人と人がいました。
ダーツライブは、常に新しいことに挑戦し続けています。セガのいちプロジェクトから事業化を果たしたというベンチャーマインドは変わっていないのです。
私のキャリアは1999年に入社した株式会社セガ・エンタープライゼス(現・株式会社セガ 以下、セガ)から始まりました。ゲーム開発者としてアーケードゲームやオンラインゲームに携わっていたのですが、あるときから仕事後に部署のみんなでダーツへ行くようになったのです。
入社当時、お金も持っていないし、西麻布や六本木なんて怖くて行けなかった。そんなとき、ふと上司にと連れて行ってもらった西麻布のバーで遊んだダーツがメチャメチャ楽しかったんです。
ダーツの対戦やそこで生まれるコミュニティや関係性に即ハマってしまい、自分の周りの人にも教えたくなったんですよね。なんといいますか「アソビ」の経験を伝えたいというか、そういう感情が強烈に湧き出てきたのを思い出します。
会社では駆け出しの若手でしたから、朝方に帰宅してシャワーを浴び、すぐに出社してゲーム開発に没頭して、また夜にダーツへ…ということを繰り返していました。そのうち、ダーツ大会への参加を目指すようになったんです。30戦のスタッツ(ダーツの成績を数値化したもの)を紙に書いて店員に手渡し、それが大会運営側に承認されると出場できるという流れでしたが、30戦の結果を紙に書くのは一苦労。
飲食店でもあるので、どうしても紙が濡れて文字がにじんだり、紛失してしまったりと明確な記録を取るのが難しかったのです。そんなことをしているうちに、当時の部長がプロデュースしていたセガの「ダービーオーナーズクラブ」というゲームがアイデアの発端となりました。
このゲームは専用カードをマシンに挿して、競争馬を育成シミュレーションするゲームだったのですが、同じ仕組みを使えばダーツのスコアデータだってデータとして残せるのでは?と、現在のダーツライブシステムの初期草案が生まれたんです。
みんなで「それだ!」と盛り上がって社内に持ち帰り、研究開発プロジェクトとして試作をスタートしました。遊びから生まれた発想でしたが、ビジネスとして成立するだろうという確信は密かに持っていましたね。
その後、当時の社長が「やるぞ」と旗を振ってくれたことで、社内研究のプロジェクトから事業化に向けて話が進んでいきました。準備を進め、まずは何がどう面白いのかを実際に見てもらうためロケーションを用意して「ダーツライブ」を初披露したのが2003年のこと。社内ベンチャーだった取り組みが、株式会社ダーツライブになったのです。
2023年にはサービス開始20周年を迎えます。現在では約2900店舗という場所に、ダーツライブのマシンが約7400台が市場にあります(※)。年を追うごとにダーツがコミュニケーションツールとしてもスポーツとしても世の中に「楽しい」を提供できていることを実感しています。
※2022年3月末時点
そんな「場所」に、さらにたくさんの人たちに気が付いてもらうための取り組みの一つが、有名IPとコラボレーションです。施策を進めていると、ときに想像を超える効果が生まれることがあります。
たとえば、2015年に実施した『劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-』とのコラボレーション。ダーツの得点によって作品のイラストが描かれたゲーム画面が獲得できたり、ダーツが難しいポイントに刺さると人気声優の声が演出として発生したりするという企画だったんですね。
しかし、すべてを見るためにはダーツの腕が必要で、ダーツ未経験の方には少し高いハードルでした。そこで、ダーツが上手な人と作品ファンの方が一緒に遊びに行き、上手な人が出したゲーム画面や演出をファンの方が写真撮影して楽しむという特殊なコミュニティが生まれたのです。
世の中の人たちが好きなものを我々のサービスの中で表現し、その表現に関心を持った人がダーツに興味を持っていただく。ここは私が大切にしている部分です。
▲2022年にはコラボレーション第2弾も実現
もちろん、ただ人気作品のIPを獲得して調整して実施して、運任せのように流れが生まれるのを待っているわけではありません。戦略を立てて、流れを呼び起こしていくことが重要です。
最近では、2021年に実施した『東京リベンジャーズ』とのコラボレーション。もともとは、11月1日に情報解禁することが決まっていました。ですが敢えて前日にSNSだけで「東京リベンジャーズとコラボ決定」という画像を投稿することに。いわゆるティザー告知、“匂わせ”と呼ばれるものです。
これは、10月31日という「ハロウィン」の日が作品の中で扱われている大事な日ということに加え、その年のハロウィンでは、東京リベンジャーズのコスプレが流行るだろうというリサーチを経ての仕掛けでした。
予想が当たり、その日は一般人から有名人まで『東京リベンジャーズ』のコスプレを楽しんでいる人が多くいるような状態。そのタイミングでSNSに画像を投稿したことで、ダーツユーザーに留まらず作品ファンの方々の中でも「え?何!?」と話題となったのです。
そして間髪を入れず、翌日に詳細情報を発表し、11月2日からコラボレーションアイテムの販売を開始しました。
その結果、キャンペーン実施前から私たちに注目していただき「アイテムを購入する→アイテムを使うためにダーツに出かける」という好循環を生むことができました。
常にこういう成功ばかりではないのですが、仲間と一緒に成功体験を得て、一歩成長し、また新しいことに取り組む。そのトライ&エラーの繰り返しで、企業としても成長を重ねているのだと思います。
創業当初から比べると大きく成長したように感じますが、ダーツライブは道の途中、発展途上にあると思っています。セガサミーグループにいるけれど、まだまだ中小企業で伸びしろがあるんです。
ホールディングスの一員というのは強みです。グループ各社の多岐に渡る事業や技術の力を、ダーツライブとしておいしく料理して世の中に届けることもできますし、そういうことが柔軟にできるのはダーツライブならでは。グループ他社を見渡しても、実はダーツライブにしかない強みってたくさんあるんですよ。
それに一つのサービスを20年も続けて、しかもそれが廃れずに進化し続けているなんて、世の中的にも少ない。そこにおごることなく、どんどんチャレンジをし続けているからこそ、「とがっている会社」でいられるんだと思います。
▲オフィスのあるセガサミーグループ本社にて
だからこそ、私はこの仕事が楽しいのです。
セガの一角で生まれたプロジェクトから会社がはじまり、当時スローガンに掲げた「ダーツを10年後には文化にしよう」から20年。ダーツは「ナイトエンターテインメント」から「スポーツ」にまで広がりつつあります。
これからも私はフロンティアスピリッツを胸に、会社というステージの最前線に立ちながら、ダーツライブにしかできないことを仕掛けていきたいと思います。