株式会社ダーツライブのWebデザイン部でチームマネージャーを務めている高橋 直也。ほとんどの情報が集まるWebサイトの大改修をはじめ、大会やキャンペーンなど、世界20か国を相手にしたダーツライブサービスのWeb制作を任される存在です。そんな高橋が、メーカー内Webディレクションの面白さと使命を語ります。
▲プライベートでもダーツが趣味。
私は2013年の入社以来、Webサイト全般に携わってきましたが、Web制作には「終わり」がないと思っています。もちろん制作に納期はありますし、サイトオープン時には制作は完了しています。
ですが、たとえWebサイトが公開となっても、今の状態が完全に正解というわけではありません。常に市場は動いていますから、その動向に合わせてサイトも変化したり成長したりしていくものだと思っています。
2年前に、「DARTSLIVE.com」という私たちサービスの顔ともいえるメインサイトのフルリニューアルを行いました。かなり大掛かりなリニューアルで、時間も手間もかなりかかりましたね。目に見えるサイトの表面だけでなく、裏側で動作しているシステム含め、全てをまるっと作り替えました。
日本だけでなく約20か国で展開をしているサイトで、規模としては結構大きい。私たちのサービスにまつわる新着情報だけに留まらず、ダーツの大会情報があるかと思いきや、これまでダーツをしたことがないユーザーが、ダーツを始めようと思ったときに手助けになるような情報も同じサイトの中にあります。
サイトを訪れる人の振り幅がかなりあるので、リニューアルの根幹になる「メインターゲットはどこか」という部分から既に苦労がありましたね。単純な言い方をしてしまえば、私たちのサービスを知っている前提なのか、そうじゃない人なのか。すでにダーツを楽しんでいるダーツファンに向けた情報出しなのか、それともこれからダーツを始めようとしている初心者層なのか。この部分は、社内でも意見が分かれたところです。
サイトのコンセプトをダーツファン前提にしてしまうと、どうしてもニッチでコアな情報に偏りがちになります。これまでの数字を基準にサイトを捉えてみたり、マーケティングの目線を取り入れてみたり、いかに納得感を持って進められるかを意識しましたね。
それと同時進行で、運用面も考慮しなくてはいけません。サービスのメインサイトですから、さまざまな情報を出すでしょう。サイト更新のための社内リソースを頻繁に使うことになります。
そのため、サイトデザインという表側のクオリティを上げつつも、システム面を調整して裏側の使い勝手をよくしていくという、バランス調整がとても悩ましかったです。そしてこれは、サービスが続く限り常に検討し続けなくてはならないことだとも思います。
▲初心者向けサイト「はじめてのダーツ」
ダーツライブに入社する前は、テレビ局のWebディレクターをしていました。職場の仲間たちとよくダーツバーに行くようになり、この頃からダーツが大好きで。もともと好きなことを仕事にしたいと思うタイプなので、ダーツライブがWeb制作の求人をしているのを見つけて「絶対入りたい!」という気持ちになったのを覚えています。
先のサービスサイト大改修も印象深い仕事でしたが、これまで手掛けたサイトの中で最も印象に残っているのは「はじめてのダーツ」の企画です。これからダーツをはじめる人のために基本情報をまとめたサイトですね。
私自身、ダーツを始めたばかりの頃は、ダーツのルールや超基本的なこと―たとえば投げ方やダーツにまつわる用語、マナーなどをネットで調べていたんです。ですがネット検索がスムーズにいかず、本当に欲しい情報がすぐに見つからないことの方が多かった。だからこそ、ダーツの初心者が「このサイトを見れば、ダーツのことなら何でもわかる」という環境を作りたいと思い、サイト制作を提案しました。
メディアチームと協力の上、いざサイトオープンしてみると好評な滑り出しで、あっという間に月間10万PVを安定的に獲得するサイトにまで成長。ダーツ関連でも検索結果の1、2番目に表示されるようになりました。当時の私と同じように、ダーツの基本的なことを知りたい人が、やっぱりたくさんいるんだなと実感しましたね。実は、このサイト制作を提案したとき、社内からは賛否両論の意見がありました。
「すぐに売上に直結するものではないのに作る必要があるのか」というのが反対意見の中心でした。しかし、「ダーツ 投げ方」でネット検索しているような人たちは、未来のダーツライブユーザー層だと思うんです。ですから、すぐにお金に結びつかずとも長期的な視点で非常に有意義なことだと信じていました。Webは売上をつくるだけでなく、認知を広げていくという大事な役割があると考えています。世の中に広く「ダーツの魅力」を伝えていき、そこから「ダーツライブ」を知ってもらうという、新たなファンを継続的に生み出し続けられるような場所をWeb上に提供できるのが僕の理想ですね。
ダーツライブでは、イベントやキャンペーン企画が立ち上がると、Webデザイン部からも担当者が入り、プロジェクト単位で進行していくことが多いです。熱意のある社員が多いので、制作過程で「もっとこうできないか」「やっぱりこうした方がいいと思う」と、どんどん形が変わっていくことがほとんどです。そういう紆余曲折の中でアイデアや意見を出し合い、形にしていくのは本当に面白いです。
ただ、白熱すると徐々に当初の目的やターゲットがズレてきてしまうこともあります。ユーザーへ情報を届ける「港」となるWebを担当する我々は、常に冷静でいること。一歩でも二歩でも引いて俯瞰で見ることが最も大事なことだと感じますね。
同じダーツサービスの中でも、さまざまな案件が動いているダーツライブにとって、どんなユーザーに何を伝えて、どんなアクションをもらいたいのか、そのためにはどのようなWebに仕上げるべきか―そこを考え続けていないと、あっという間に「伝わらないWebサイト」になってしまう危険さも知っています。
Webサイト制作を通して一緒にサービスを作っている感じですかね。単純に制作を請け負う立場ではなく、メーカーの中にいるWebデザイン部チームとして強みと感じるのは、目的の理解度とスピード感。社内全体のことが見えているから、目的も明確に理解できるし、スピードにも対応できる。無理難題を言われて途方に暮れることもありますが(笑)。それも、面白味ですよね。
ダーツライブに入社して以来、ずっと意識しているのは世の中のWebに関するトレンドです。私たちのユーザーが使っているデバイスはPCからスマホになり、SNSの普及によってユーザーの流入経路もどんどん変化してきている。ですから、市場の変化に合わせて制作をしていかないと、時代に取り残されていってしまいます。ダーツとは関係のない他サイトを見ていて「面白い」と思った新しい技術も積極的に取り入れています。
今の私の原動力は、Webを通して自分の好きなダーツについてもっと知ってもらいたいという気持ちです。どれだけWebサイトを作り込んでも、「好きだから知ってほしい」という気持ちがなければ、それはただの説明ページで終わってしまうと思っています。
ダーツライブはダーツ業界のリーディングカンパニーです。SEO的にはダーツに関連するサイトの中で上位に表示されます。この土壌があるということは、もっとダーツの魅力を広めていけるはずですし、その使命があるということなのです。Webはユーザーとのファーストタッチポイントになることが多いはずです。コロナ禍は、外でお酒を飲んだついでにダーツするといった機会が減った期間でした。でもWebならユーザーがどこにいようと触れ合えますよね。
ダーツの知識はもちろん、ダーツ本来の楽しさをもっと広めていきたい。だから私はこれからも、会社とダーツユーザーを結んでいくだけでなく、ダーツユーザー以外の人とも出会い、楽しんでもらえるWebサイトの制作に取り組んでいきます。