株式会社ダーツライブでデザイナーとして働く西森大樹。美大卒業後にダーツライブに入社した彼は、2017年に一度退職します。その後、広告制作会社やイベント制作会社を経験したのち、再びダーツライブへ。その経験がもたらしたデザイナーとしての学び、働き甲斐とは。
※本記事は2021年に公開したものを再掲載したものです
▲学生時代、ラジオ番組でインターン先で制作したショウウィンドウをプレゼン
私は美術大学を卒業した後に株式会社ダーツライブ(以下、ダーツライブ)へ入社しましたが、社歴としては長くありません。入社3年目を迎えたころ、より幅広い経験を積みたいと考え一度退職しているのです。 ダーツ業界というと、少しニッチなイメージがあると思います。私自身も「ダーツ」というピンポイントな商材を扱う中でデザイナーとしての実力が測れないな、という悩みに直面しました。 そして「もっと多くの人の目に触れるデザインに携わりたい、経験の幅を広げてみたい」という想いが日に日に強くなり、転職をすることに。
転職後は、広告制作会社とイベント制作会社で経験を積みました。 国内外問わずプロモーション展開しているような大手企業様の業務を担当させていただいたり、多くの方が来場するイベントのポスターやノベルティ制作を行ったりするなど、一気に世界が広がった気がしましたね。
常にいくつもの案件が動いている状態。これまでとは違ったベクトルで、スピード感や調整力も鍛えられました。コンペで案件を勝ち取るための質の高さも要求され、他のデザイナーと切磋琢磨し合いながらスキルが磨けたように思います。
その一方で、自分が作った広告デザインに対する反応がダイレクトに感じにくいことに気が付きました。たとえば家電メーカーの広告だと、その広告デザインを見てどう感じたのかを知ることが難しい。製品そのものの魅力がフォーカスされがちで、受け手との距離感も遠いので広告がどう受け取られたのかが見えにくいのです。
世の中に求められているデザインと自分の作るデザインをすり合わせていく「物差し」のような基準を持てるようになるにつれ、もっとこれを活かして相手に訴求するデザインをやりたいと感じるようになっていきました。
そんな自分に迷っていたとき、ダーツライブがデザイナーの募集をしていることを知りました。退職後も会社のメンバーと繋がりは持っていて、会話の中で「ちょうど今募集しているし、また受けてみたら?」と言ってもらって。 私も他で経験を積んだことで、以前とは違う向き合い方ができるのではと思ったのです。
過去の自分はどこか受け身なところがあって「いいな」と思えるデザインを上手にかみ砕いてアウトプットすることができていなかった。「いいな」と思ったものは「いいな」と思っただけで留めていたといいますか、そこから「何がどう良かったか、自分の作るものにどう活かせるか」まで至っていなかったように思います。 今の自分ならメーカーのデザイナーとして何を提案できるのか改めて挑戦がしたいと思い、2019年にダーツライブに再入社をしました。
2021年現在は、サービスに関するビジュアル制作や、ポスター制作、イベント・キャンペーンなどのデザインを担当しています。 ICカードのデザインなど印刷物からWeb、デジタルコンテンツ、他企業様とのコラボも多いので業務の幅は広いですね。 私たちのようなインハウスデザイナーは、既存ユーザーだけでなく、これからユーザーになってくれるかもしれない人々とメーカーをつなぐ存在でもあると考えています。
デザインは、いわば「会社の顔」となるもの。世の中の人たちの目に自然と入り込み、ポジティブな印象を与えるものでなければいけません。そこをどう作り込んでいくかに楽しみ感じながら仕事をしています。デザインで人を振り向かせるイメージです。
ダーツの魅力を最大限に伝えていくために、デザイナーもプロジェクトの一員として一緒になってモノ作りをします。 ダーツライブは、業務が縦割りで分断されていません。それは、インハウスだからというのもありますが、ダーツライブならではの大きな特徴でもあると思います。
会社の顔となるものを作るなら、自分も納得できるものをデザインしたい。これまでの経験を最大限に活かしデザインしていくことが大事です。心がけていることは、説得力を持たせるために企画に積極的に関わりながら意見を発信し続けること。
アートと違いデザインは、相手に伝えたい情報をきちんと整理することだと思っています。会社が伝えたいメッセージ、サービスを通じて伝えたいことを届けていける存在になれるよう仕事に取り組んでいます。
▲担当した「ダーツライブホーム」プロモーションデザイン
再入社してから特に印象に残っているのは、「ダーツライブホーム(家庭用ダーツボード専用アプリ)」のプロモーションデザインです。 サービスのロゴデザインからサービス全般のビジュアルの制作、そこに関わる写真撮影、Webやアプリでのプロモーションなど一連の流れを担当しました。
制作会社でデザイナーをする場合だと、ロゴだけ、ビジュアルだけ、といった形で仕事が細分化されることも多くあります。それが自社であれば一貫して関わることができる。一度退社しているからこそ、改めてその面白さを感じましたね。 「実際にプレイした人がどう思うか」、「たまたま目にした人はどんな印象を抱くだろうか」と、各フェーズの中で目にしてくれる人のことを想像しながらデザイン制作に取り組みました。
リリースした後も、ユーザーから反応を得られることも嬉しかったです。自分が作ったものに対してSNS等でも良い反応を得ることができました。 自社製品だからこそ、利用者の声を営業部の方などから直接聞くことも魅力的だなと再認識しました。 その具体的な反応を次のデザインに活かせる点も、インハウスデザイナーならではの強みだと思うようになりました。
先日も、とあるキャンペーンのプロモーション制作でこんな体験をしました。そのキャンペーンは、第一弾、第二弾という二部編成だったのですが、第一弾をリリースした後、積極的にユーザーの反応を探ってみたのです。実際のユーザーだからこそ、厳しい意見や感想もありました。そこで第二弾の企画を煮詰めていく段階からアウトプットするデザイン制作に至るまで、ユーザーの感情を推し量りながら制作したところ、明らかに第一弾のときよりも好評を得られました。
プロモーションのデザインというのは期間限定的なものに見えますが、反省点やフィードバックを分析して改善していくことで、ユーザーとの関わりを長期的なスパンで築いていくことができると感じましたね。 ダーツライブというブランドやサービスの顔を作っていく過程に、一貫して関われることは大きなモチベーションになっています。
私は、一度退職して「広い世界が見たい」、「幅広いデザインがしたい」という気持ちを行動に移したからこそ、今の自分があると思っています。 転職したことで、デザイナーとして自分がどういうときに喜びを感じるのかを確認できました。再び同じ会社に入社しましたが、仕事に対する捉え方・考え方が少し変わって、いいモチベーションと充実を感じています。
仕事を進める上で大切にしているのは社内ミュニケーション。インハウスデザイナーとして、他部署スタッフと互いの主張をすり合わせて、やりたいことやアイデアを言語化し、デザインに落とし込んでいくことは使命です。
そのためには、訓練も必要。たとえば映画や美術の展覧会などで「これは良い」と思ったものがあれば「何が良かったのか」を言語化し、人に説明するときの伝え方も意識するなどして、日常生活から仕事に活かせる言語化のスキルを上げようとしているところです。
これから先、ダーツライブでは「ダーツ人口を増やしていく」ことも目標の一つになっています。そのためには、デザインの力で広く世の中にダーツの魅力を発信していかなければなりません。 これは私にとって、とてもやりがいのあるフェーズに入ったと受け止めています。自分が作るデザインが会社の顔になっていくからこそ、自分のデザインがダーツのスタンダードになっていくかもしれない。
これからアートディレクターとして、会社やダーツのあり方をデザインで創り出していく存在を目指して仕事に取り組んでいきたいです。